2009年4月9日、イタリア・ラクイラで大きな地震が発生した。犠牲者は309名と多く、地震直前に政府市民保護局が出した「安全宣言」が被害を大きくしたとして、この記者発表に関わった行政官、学者ら7人が起訴された。1審は全員有罪、2審は行政官のみ有罪の判決だった。地震前後の新聞、当該テレビニュース、現地の識者(大学研究者)、そしてラクイラ市民へのインタビューでわかったことは、日本で報道されていた、学者の地震予知失敗が起訴理由ではなかったこと、インターネットも含め多くのメディアがあったにもかかわらず、不安を抱えていたラクイラ市民に有益な情報は皆無であったこと、そして、安全だと行政官が発表したことをそのまま「ラクイラ市民には朗報だ」と報じたテレビは、安全宣言のニュース報道が被害を大きくした可能性があり、この点で責任を問われた7人と根本的に変わりがない。多様なメディアがどのような性質の情報を流しているのか、再考する必要がある。