本研究は、ヨーロッパおよび東京都の排出権取引にみられる新興の市場を対象として、売手と買手の双方が数量あるいは価格を同時に操作することによって効率的な取引を妨げる「市場支配力」について分析を行い、取引者の規模や費用構造などの要因と市場支配力の関係を明らかにする。市場支配力を左右する要因の影響を明らかにすることによって、適切な政策を通じて支配力を抑制し、効率的な市場取引を促進することが期待される。従来の研究では、売手あるいは買手のどちらかに限定して市場支配力を分析していたが、本研究では、売手・買手双方の市場支配力を同時に分析する「双方寡占モデル」を用いる点が独創的である。