本研究は、アジア民衆史を地理的、歴史的、政治的、社会的境界を帯びた「多重境界性」の観点から取り上げて新たな歴史像を探ることを目的とし、琉球諸島の集落において発掘をはじめとする学際的調査を行った。
研究を通じ、近世琉球期の社会的境界は18世紀には動揺していたこと、19世紀後半の政治的境界は周縁地域にも明瞭に現れる歴史的境界でもあったこと、近世琉球期の諸要素は20世紀後半まで根強く残ること、琉球諸島と奄美諸島の間には地域内の地理的境界が政治的境界と重複することが明らかとなった。琉球諸島の多重境界性は災害多発期とされる18~19世紀に強まり、今日に繋がる地域の特徴が形成されたと考えられる。