本研究課題では、総合的なディスクロージャーの質の尺度を導出し、利益の質との関係を検証することを目的としている。本年度は、この準備段階として、会計情報のディスクロージャーにおける(1)市場の合理性、(2)会計情報全体の精度、(3)個々の基準の3つの観点から、利益の質に及ぼす影響について研究を行った。
(1)については、Mishkin(1983)のモデルを用いて、利益の質と市場の合理性との関係を検証した。その結果、利益の質が高い(低い)ほど、市場は利益やその構成要素の持続性を合理的に評価している(していない)にとが確認された。
(2)については、Barron et et al.(1998)のモデルを用いてアナリストの利益予測から会計情報の精度を導出し、利益の質との関係を検証した。その結果、会計情報の精度が高い(低い)ほど、利益の質も高い(低い)ことが確認された。
(3)については、金融商品会計基準を取り上げ、金融商品会計基準によって損益計上されるようになった評価差額と利益の質の関係について研究を行った。その結果、損益計上される評価差額は追加的な価値関連性を有して利益の質の向上に資する一方、発生項目の予測誤差を増大させて利益の質を損なう面もあることが確認された。