本研究は、メインバンク関係が融資先企業の配当政策に与える影響の解明を目的としている。債権者かつ株主である日本のメインバンクは、融資先企業に対して強い交渉力を持つため、融資先の配当政策に影響を及ぼしうる。Lintner (1956) モデルに基づいて分析を行った結果、メインバンク関係は、概して融資先企業の配当平準化を緩和させるとともに、目標配当性向を低下させる証拠が得られた。日本のメインバンク・システムは、効率的なガバナンス・メカニズムとして機能してきた半面、問題視されている日本企業の過大な内部留保の一因としての負の側面も有していたと結論付けることができる。