本稿は、業務純益を明示しない銀行の損益計算書の様式について、その妥当性を判定すべく、地方銀行を対象として、単体業績諸指標の価値関連性の優劣について分析を行った。業務純益等のデータが入手可能である最長期間を検証期間とし、データのpoolabilityの点からサンプルをバーゼルⅠ適用期間およびバーゼルⅡ・Ⅲ適用期間に分割した検証もあわせて行った。分析モデルは、会計制度を検証する文脈において銀行業の業績諸変数の価値関連性を検証するという本稿の趣旨に照らして、価値関連性研究において一般的に用いられてきた利益・簿価モデルを採用した。検証結果を整理すると、総じて、業務純益および各種業務純益の価値関連性は、経常損益や純損益のそれと比べて遜色ない水準にあると認められた。価値関連性に照らして、業務純益を明示しない損益計算書の現行様式を堅持する必然性がないことが示唆されたことから、本稿は、さらに、地方銀行の個別損益計算書をつうじて業務純益情報を開示する4つの方策を挙げて検討した。そして、その一環として、経常損益計算の中途において業務純益を算定表示する損益計算書の様式案についても検討を行った。