一般にヨーロッパの宗教改革は「近代的」なるものの出発点の一つとされるが、ジェンダー史の面でどうであったかを問う実証的な研究は少ない。本研究は宗教改革の最左派である再洗礼派(とりわけスイス兄弟、南ドイツ再洗礼派、メノナイト、アーミッシュ、フッター派等)に注目し、その発生地・移民先としてのスイス・ドイツ・オランダ・北米(とくにアメリカ東部、中西部、カナダ南部)を調査対象として宗教生活と共同体運営における男女の役割分担等を明らかにし、他のプロテスタント諸派にはない男女同権の思想と実践例が早くからみられたことを明らかにするものである。