実務の経験を有する者についての特記事項

基本情報

氏名 水口 拓寿
氏名(カナ) ミナクチ タクジュ
氏名(英語) Minakuchi Takuju
所属 人文学部 日本・東アジア文化学科
職名 教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

事項

東京大学非常勤講師

開始年月日

2014/04

 

終了年月日

2014/09

概要

東京大学教養学部前期課程「東洋思想史」(文科・理科、1年・2年対象)

【講義題目】
中国における「孔子ブランド」の盛衰と変遷

【授業の目標、概要】
 「孔子」と呼ばれた人物の思想を解説する授業ではない。彼を事実上の始祖とする「儒教思想」の沿革を追跡する授業でもない。否、講義内容にはそうした要素も不可避的に含まれるのだが、あくまでこの授業の主眼ではない。 
 中国(伝統的な地域名としての)では、歴代の政治権力や知識人たちの集団が、自らの権威や正統性(legitimacy)を主張するために、しばしば孔子という過去の「偉人」を持ち出し、言論や行為によって熱烈に讃美したり、或いは激しい批判や攻撃を加えたりした。孔子を尊崇してみせる側にとっても、排撃してみせる側にとっても、その存在は大きな「ブランド(brand)」であり続けたのだ。勿論、為政者たちや知識人たちが孔子という「ブランド」に求めた「現代性」や「価値」には、彼らを取り巻いた国家・時代や、彼らの政治的・思想的立場に応じて、温度差や内容の相違を見て取ることができる。 
 この授業では、主に中国における「孔子ブランド」の盛衰と変遷を、孔子自身が伝説上の名君たちを「ブランド」として利用した西暦紀元前6世紀後半から、北京の天安門広場に約10メートルの孔子像が立てられた21世紀初頭まで、2500年余りにわたって通観してみることにしよう。時には、日本などに「孔子ブランド」が飛び火した事例についても目を向けたい。

【授業計画】
以下に挙げるトピックを順次扱ってゆく予定だが、授業進行の状況に応じて追加・変更もあり得る。
1. はじめに:「孔子ブランド」とは何か 
2. 孔子が利用した「ブランド」:伝説上の名君たち 
3. 「孔子ブランド」の始まり:孟子・荘子・漢の高祖(劉邦)など 
4. 孔子没後の「昇進」:歴代王朝が追贈した称号の変遷(1) 
5. 「神」となった孔子、「聖裔」となった子孫:歴代王朝による孔子祭祀と孔氏一門の優遇 
6. 朱子学の登場:儒教の革新と「孔子ブランド」の変質 
7. 孔子没後の「転職」:歴代王朝が追贈した称号の変遷(2) 
8. 20世紀前半の「孔子ブランド」:康有為・袁世凱・蔡元培・魯迅など 
9. 江文也の『上代支那正楽考』:台湾出身の「オリンピック日本代表」の目に映った孔子 
10. 湯島聖堂で開催された「儒道大会」:帝国日本と「孔子ブランド」の接点 
11. 文化大革命と中華文化復興運動:毛沢東・蒋介石それぞれの「孔子ブランド」 
12. 今日の「孔子ブランド」:『論語』ブーム、天安門広場の孔子像、孔子学院の創立など 
13. おわりに:「孔子ブランド」に未来はあるか

【授業の方法】
プリントを用いて講義形式で行う。必要に応じて映像資料や音声資料も用いる。