ロシアの心理学者ヴィゴツキーの発達心理学理論が第二言語習得(SLA)とどのような接点を持つかが盛んに議論されるようになったが、本発表ではそれらの中核にある「弁証法」の概念を取り上げた。「科学的」SLA研究が進展の中で、自然科学に範をとる法則定立的な研究観がある一方、事象の個別性を深く理解しようとする研究観の対立がみられ、相互の交流、統合の視点が模索されている。両極端の研究の見方が対立したままとどまるのではなく、新しい理解の枠組みを創造していく営為を可能にすることをめざすことが「弁証法」の考え方から示唆される。